2007年3月6日火曜日

1日くらい休みたかった

深夜仕事、昼は育児 24歳母孤立
アパートの玄関に散らばった小さな靴が、火災の生々しさを伝えていた。昨年12月30日。埼玉県和光市のアパートの一室から出火したのは午後10時過ぎだった。火はたちまち広がり、焼けた居間から靴の主である男児(2)の遺体が見つかった。
ちょうどそのころ帰宅した母親(24)は、友人とスノーボードをするため午前5時から息子ひとり残して外出していた。(パンとおにぎりを置いておいた。自分で紙パンツも替えられるようになり、大丈夫と思った)。予想外の火事にぼう然となりながら、母親は警察官に話した。出火原因はコタツ。勝手気ままな若い母親が、また幼い子を死なせたー。世間ではそう受け取られたが、母子の暮らしを知った埼玉県警朝霧署の受け止め方は少し違った。一家が引っ越してきたのは、2年前一年ほど前に父親は別居し、母子2人の生活になった。20歳で妊娠し、親の反対を押し切って結婚、出産した母親は、自力で育てていこうと自給の高い深夜の調理の仕事をしていた。夕食と風呂の後に子供を寝かせ、午後10時に出勤し、午前4時過ぎに帰宅。朝食を食べさせ、子供と日中を過ごす。育児と仕事に明け暮れる中、(自分で食べられるようになったし、一日くらい骨休みしたいと思った)と泣き崩れる母親を、警察は責める気になれなかったという。男児は、乳幼児健診や予防接種を欠かさず、発達は普通だった。保育所の申請や行政への相談もなかったため、母子は(支援の必要な家庭)とは見なされない、普通の親子だった。
(公的な支援を利用したことがない)という母親の話を聞き、同署は深夜や年末にも手ごろな金額で利用可能な託児所を周辺で調べたが、一つもなかったという。10年前、子供の虐待死の件数が全国最多になった埼玉県では、その後、通告から48時間以内に子供の安全を確認するルールを作るなど、虐待防止の取り組みが進んだ。普通の親子のSOSを探し出し、支える仕組みは今もない。東京都内の高級住宅街にあるクラブ。医師や弁護士など高学歴の親が多く、熟や習い事に熱心だ。一見恵まれているが、運営する民間団体の責任者は、親の前で態度がひよう変する子供たちの様子が気になっている・職員に暴言をはき粗暴な子が、親が迎えに来るや(先生お世話になりました)とお辞儀する。連休や週末の午後に、荒れる様子が増える。(親の期待とプレッシヤーを受け、家庭でいい子を演じているためだろう。表面化しにくいが不安定な精神状態は、虐待家庭の子供に似ている)と見る。子育ての家庭の孤立化が指摘され、育児ノイローゼや児童虐待が後を絶たない。東京都世田谷区の調査では、新生児のいる家庭の半数が(育児に不安がある)と答えた。
離婚、失業、出世競争や長時間労働。大人社会のストレスや歪みが増幅され、子供に影響を及ぼしていると専門家は指摘する。(ゆとりを持って子育てできるよう親を支える必要がある。あるべき姿や心構えを説くだけでは、親子を救えない)学童クラブの責任者は危機感を募らせる。
児童虐待や育児不安など、親子の問題が広が中、親と子のSОSを考えさせられる。

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